取引先から何か問い合わせがあったとする。自分が得ている情報では対応が困難な場合、すぐにダメですという返事をする前に、周囲に確認をすることが必要である。状況は刻々と変化しており、関係者、とくに上司のほうが最新情報を持っていることが多いので、確認してから返事をすべきだ。日常の仕事の中で、もう少しきめこまかくホウレンソウがされていればビジネスチャンスを失わなくてすんだという例は枚挙にいとまがない。友人のNさんの息子がパソコンを購入したいというので、休日の午後、家電の量販店である「S」に行った。息子さんはテレビで宣伝しているH社のパソコンが欲しいという。店内を探しても見当たらないので、相手をしてくれた若い店員に聞く。「まだそのパソコンは入っていません。私どもの店に限らずどこでも売っていないはずです」「テレビでCMをしているのに発売していないのは、おかしくないの?」「確かにそうですがメーカーのほうの事情でまだ出してないみたいです。こういうことはこの業界ではよくあるんです」「ではいつ入るの?」「さあ、どうですか。今月中には入ると思いますが……」「早く欲しいんだけれどなあ。確かなことはわからないの?・明日か明後日に入るんだったら予約してもいいのだが……」「すみません。いつ入るかという確かなことはわかりません。他の機種ではダメですか」Nさんが息子に確認すると、どうしてもH社のパソコンが欲しいという。そこで「S」で購入するのは断念したものの、未練がましく、その近くにあった同じ家電量販店の「B」に行って店員に確認すると、なんと、「そのパソコンだったら、さきほど入荷しましたからありますよ」という。友人は「B」より「S」のほうが気に入っているが、モノがなければ仕方がないので「B」で購入することにした。なぜ「S」になくて「B」にあったのかと不思議に思った友人は、翌日、もう1度「S」に寄った。なんとそこにはH社のパソコンがあるではないか。昨日応対してくれた店員がいたので聞いてみた。「昨日は入荷予定はわからないといっていたのに今日入っているじゃないの。これは一体どうなっているの?」「実は昨日の夜、入荷したのです。昨日の朝の時点ではいつ入るかわからないといわれていたのであのような応対になってしまいました。ところでどうされましたか」「『B』で買ってしまったよ。昨日、私が聞いた時点であなたは上司や関係者に一言確認すればよかったんだよ。おそらく今日中に入荷するとか、明日には入荷するという情報があったはずだよ」「ええ、そうなんです。昨日の夕方のミーティングでフロア長からH社のパソコンは明日入荷するといわれたんです。『その情報はいつ入ったんですか』と聞いたら、『午後1番だ』とフロア長はいうんですよ。ひどいですよねえ」「うん、まあそうだね。残念なことをしたね」「はい、まったく残念です」というようなことで、「S」の店員は一言、上司あるいは関係者に相談すればよかったのに、それを怠ったためにパソコン1台の売上のチャンスを逸してしまった。状況の変化を素早く部下に流さなかった上司もよくないが、お客様に確答する前に上司に確認しなかったこの店員もよくない。大手企業のトップである私の知人は、「ホウレンソウが適宜、適切に行なわれていたらどれだけ儲けられたかわからない。ホウレンソウを絶対徹底させなければならない」といっていたが、この「S」のようなケースはそこら中にころがっていることと思う。とにかく、状況は刻々と変化しており、常にそれを意識して、関係者にこまめに確認して最新情報の確保に努めなければならない。
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