翌朝、僕らはバスでエディルネに向かった。いよいよ最後の道のりである。距離にして二百五十キロ。バスは快適である。前の晩、久しぶりにベッドで寝たから体も軽い。ひとつのバスに十時間、二十時間と揺られてきた僕らにしたら、エディルネまでの二時間半など市内バスで駅に出るような感覚である。エディルネから先はバスがなかった。おそらく先まで行くのは、イスタンブールからブルガリアのソフィアに向かう国際バスだけだろう。僕らはタクシーに乗り、カピタンにある国境までの十キロほどの道を走った。
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午後二時半、タクシーは国境のゲートの前に到着した。そこには高速道路の料金所のような立派なゲートがあった。ブルガリアに向かうトラックが、列をつくっていた。アジアハイウェーはここで終わっている。東京からバスに揺られた距離は一万七千二十キロに達していた。かかった日数は二十七日。バス代の総額は約五万四千円だった。タクシーの運転手が、国境ゲートに向かって左手を流れている川の向こう側を指さしてこういった。「ユナニスタン」地図で調べるとギリシャだった。トルコではそう呼ぶのだろう。この地点は、トルコ、ブルガリア、ギリシャの国境が接する三角地帯でもあった。ギリシャ側のこんもりとした丘が、春の午後の弱い陽射しを受けていた。エーゲ海まではどれはどの距離なのだろうか……。